中村里美/造形講師/一般社団法人sol 理事
福岡県うきは市出身。結婚後、大津町周辺で25年前から子どもたちの造形活動に関わる。また学校の相談員として、教室へ入りにくい子どもたちや保護者に関わる活動、子ども食堂の活動を続けている。温かい雰囲気でスタッフみんなからも慕われる「母」のような存在
アトリエモモの療育では、「造形」を活動の柱の1つとして行っています。
少し聞きなれない言葉かもしれませんが、造形とは文字通り「かたちをつくること」
工作や製作と比べて「制約が少なく、より自由に作り出すこと」が特徴だそうです。
今回は開設当初よりアトリエモモで子どもたちに造形活動を指導している、中村里美さんにアトリエモモの造形についてインタビューしました。子どもたちからも「さとちゃん」の愛称で親しまれている里美さん。
さとちゃんが造形で大切にしていること、そして密かにこれからやってみたいこととは…?
中村里美さん(以下、さとちゃん)の造形講師としてのルーツは、短大で洋画を学んだこと。一時は生活のためパートに出ようと考えたこともあるそうですが「あんたは絵から離れたらいかん」というご主人の言葉に背中を押されて、25年前アトリエ教室を開所し、子どもたちに造形活動に関わってきました。
団地の集会所で近所の子どもたち3人から始まった、さとちゃんの教室「アトリエもこもこ」。その後町内の幼稚園、保育園で講師をつとめながらも大津・合志で4つの教室を主宰しています。
アトリエモモでは今年度、火曜日(毎週)と木曜日(隔週)の療育で造形を実施。
さとちゃん 「子どもたちの要望も聞きながら、スタッフと相談しつつ進めています。段ボール工作や、遊べる工作作りをしたり。こないだの大きくダイナミックなものを作りたがる日なんかは、車とかロボットをつくりましたね。実験好きの子も多いです。
一方で、草花を摘んできて葉っぱの型押しをしたり… 季節を取り入れた造形で、色彩が豊かという感じがしますね」
さとちゃんが子どもたちに造形を教えていて大切にしているのは
自分の手のひらで、感覚を感じること。
さとちゃん 「造形を通じて、小さいときに色んな感覚を手のひらを使って味わってほしいですね。うん、この手のひらでね。例えば土とか、木とか、紙とか、葉っぱとか。
それはどの造形でも思っていて、できるだけべたべたとかぐちゃぐちゃとか、ぬるぬるとかそういうのを楽しんでほしい。原始的な感覚を刺激したいですね」
造形を通じて普段触れないような多様な素材に触れ、感覚を味わう。
そんな時、子どもたちはどんな反応をするのでしょうか。
さとちゃん 「子どもたちの様子はね、最初、おどおど。でもいったん触ったらパッチーン!!って割れる感じ。それを見るのが楽しい。造形教室はお勉強するところじゃなくて、わくわくする体験ができるところとわかってほしい。だからパチンと殻が破れるようなことを最初に持ってくるようにしてますね」
子どもたちにとっての体験の鮮烈さ。
それはさとちゃんのアトリエを卒業した、子どもの親御さんの言葉にも表れている。
さとちゃん 「卒業した子のお母さんから言われることで、印象的なことは『色んな体験させてもらって』って言われるんです。『今でも作品とってます』とか『アトリエもこもこの作品コーナーを家の中に作ってますよ』とか…」
さとちゃんに今後、アトリエモモの造形でやってみたいことについて尋ねました。
さとちゃん 「私、造形っていうより、子どもたちと”遊びながら”大きなものを作ってみたいなあ。昔、アトリエモモの敷地の砂を使って大きな木の絵を作ったね。あれが印象的だったな」
畳2畳ほどの大きさの紙にボンドで木の幹や枝の形を塗りつけ、本物の砂を絵の具のようにまぶして創りあげた大作です。木の葉っぱの部分には、モモ周辺で見つけた落ち葉を貼っています。まるで自然の木をそのまま持ってきたかのような存在感。
さとちゃん 「自然の中で作品を創っていく、そんなことをやりたい。たとえばプレイパークみたいな広いところに泥山があって、それで泥染めをしたり、その泥で山の彫刻を作ったりしたら楽しいでしょうね。
そこにある自然物をつかって、その場そのものが作品になるような。そこにいる子どもたちも、そのまま作品の一部になるような…そして自然の中やアトリエモモの場所で子どもたちの作品の展覧会もやってみたいですね!」
そんなさとちゃんの壮大な探求心を引き出してくれるのは、アトリエモモのある阿蘇高森の雄大な環境だと言います。
さとちゃん 「アトリエモモに来ることで、私も刺激を受けています。この環境がそういう思いを引き出してくれるんですよね」
今回さとちゃんのお話を聞きながら、さとちゃん自身が自由に造形を楽しんでいることが伝わってきて私もワクワクしてきました。アトリエモモという雄大な自然環境の中で、これからも子どもたちの素敵な作品が生まれてくることでしょう。
さとちゃん
貴重なお話を聞かせていただき、本当にありがとうございました!