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おてんとさん

「おてんとさんだより」2023年3月

中山千春
2023-10-11

毎日の子どもたちとの関わり。こっちかな?あっちかな?場の流れや雰囲気を読み取りながら、一人一人の今日の立ち位置を感じながら進めていく。

保育・療育・教育・治療・森のようちえんはこう!とか、マニュアルはないと思っており、「こうだからこう・この時はこうしないといけない」と思った瞬間に、相手の意思とは違う方向に進み、通じるものも繋がれなくなってしまう、と思いながら子ども達の前に立たせてもらう。なので、1日として同じやり方でやったことはない(もちろん最低限の構造や声かけ・スケジュール・体制・安全管理など守りながら)。いつも試行錯誤、これが人相手の仕事の醍醐味であるもうまくいくとの保障もなく毎日が試行錯誤の連続。

だからこそ、大切にしているのは「子どもたちと同じ雰囲気の中に浸る」ということ。
じんわりと子ども達の雰囲気に混じり合っていく。

こんなことを意識して人と関わりもう20年以上。これもあの時の心の苦しみを抱えた彼女との日々があったからこそ。

2月、子ども達の中にも太い関係性ができており、今日一緒にいたくないや思ったこともズバズバいう子どもたち。何が起きたのかふとした瞬間に喧嘩になっていることも。
前日私は健診で不在だったので保育の申し送りで、どうも遊ぶ場所を巡ってCちゃんとS・M・H他言い合いを長らくしたらしい。そして、右往曲折あり子どもたちなりの仲直りをしたらしい・・との情報を共有してその日が始まった。

前日1対数名になってCちゃんどんな気持ちだったろうか?お母さんには話せたかな?もう、次に向かう気持ちになっているかな?想いを馳せながら入る。「昨日どうだった?」「嫌じゃなかった?」「今どんな気持ち?」とか、探ったり聞き出したりはしない。喧嘩してもその時言えない気持ちもあるし、言葉にならない気持ちもある。大人が聞くことで無理に言語化したりするのにも違和感を感じる時もあり、そこに留まらせそっと見守ることもある。かまって欲しい時もかまってほしくない時もある。

その日は、森の落とし穴のシーソー横で年長さん中心に家族ごっこが始まろうとしていた。しばらく様子を見ていたら、不意にCちゃんがターザンロープの方に行った。何かあったのかな?昨日の気持ちを引きずっているのかな?と思い、不自然にならないようにしてそばに行く。今ロープは使えず「えーっ」と言っていたCちゃんを横目に横に伸びた木に私は座り、黙って足をぶらぶらさせていた。すると、Cちゃんも木に登り横に座り一緒にぶらぶらと。

一緒に木を楽しみ、黙って森を感じ・ふとした瞬間に「昨日ね・・・嫌なことあったんだ・・・」と話し出した。どんなことがあったか話し、笑いながら「Mちゃん、写真撮影しよう!とか言うんだよ!もうよくわからんよね(笑)」ひとしきり話し、楽しそうに見えたのか感じたのか、遠くの子らも「何してんのー?」と寄ってくる。「なんでもない!」と言い、「面白い木を見つけたよ!」とSに渡してCちゃんなりに上手にまた家族ごっこに戻っていった。

戻っていく彼女の背中は明るかった。味わい深い時間だった。Cちゃんと共に心の旅をしてまた戻る。その間、私は彼女の感情を共にし、うなずき聴いただけだった。私が聴くことで彼女は自分の心の声を再び聴いたのか。こんな風に子どもたちと人と心の旅に出る瞬間がやめられずにやっぱり私は今日もここにいる。

おてんとさんに関わるみんなが、今日という日を右往左往・色々あったけど私にしかない、私の1日だったと思い、小さな幸せを感じられるように。そう願いながら過ごす日々。

3月は別れの季節。

もう日々泣きそうになるくらい愛おしい時間。体が3つはほしいと願う。そんな気持ちにさせてもらうのもみんなのおかげ。関わった人の背中をずっと見守っていきたいと思う3月。かけがえのない日々をありがとうございます。

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